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第10話
タコが咲かせる花

海藤花ってご存知ですか?「海の藤の花」だなんて、なんだか風流な名前ですね。
「かいとうげ」と読み、マダコが産んだ卵のことをいいます。
この名前がついたのはもちろん藤の花に似ているというところから、明石藩の儒者が命名したといわれています。
マダコの卵には一つ一つ糸がついており、雌は産卵の時にその糸をこよりをよるようにして産卵します。すると、真ん中に太い糸のようなものができ、その周りに卵がくっついているような状態になります。そうしてつむぐことでつながりを強くし、海底や岩に産み付けて海流に流されないようにするのです。すると波にゆらゆらゆれる卵が風になびく藤の花のように見えるというわけです。
「海藤花」は塩漬けのほかに酢の物や椀種、丸ごと煮付けにすることが多く、プチプチとした食感が楽しめます。
マダコが産んだ卵を「海藤花」というなら、産む前の卵はどう言うのか気になりますね。
かにやえびなどの産卵前の卵巣を「内子」といい、マダコの場合も同じく「内子」といいます。
「内子」はもっちりとした食感が特徴で、特に絶品とされるのが明石の老舗料亭「明石屋」のタコの内子の煮付けです。味にこだわる人々が訪れ、そのおいしさに舌鼓を打ちます。
「内子」と「海藤花」、どちらも勝るとも劣らない美味しさなのですが「内子」の呼び方も「海藤花」のような素敵な名前がなかったのかなぁと思ってしまいます。
ぼってりとした丸めたおもちのような見た目の「内子」が、産卵されることによって藤の花のようになるわけですから「海藤花」はまさにマダコが咲かせる花なのです。

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